春先のにわか雨
トミーウォーカーが運営するPBW『エンドブレイカー!』での活動記録です。
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2012
05,12
無題
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藍鳶カナンMS様のイベシナ「扉の世界」
http://t-walker.jp/eb/adventure/rp.cgi?sceid=10554&term=novote&span=7
参加は見送りましたが、OPを見て浮かんだ妄想がありました。
拙筆ですが公開しておきます。
(本来のイベントの趣旨とはかなり異なっています)
===
ラッドシティの戦いで比較的損傷の少なかった都市部では、紫の木による混乱もエンドブレイカー達によって治まった後は、打ちのめされた住人も少しずつ立ち直り、元の生活を取り戻し始めていた。
彼らが今後についての情報を持ち寄り、今後について話し合い、傷ついた心を慰めあう場所といえば、やはり酒と食事を出す店となる。たくましい商売人達が断絶した流通網を苦心してたぐり寄せたおかげで、大半の店では以前の活気までは戻らないまでも、メニューを減らした通常営業の体を成しつつあった。
その中のひとつ、どちらかといえば大人好みのするような雰囲気の軽食屋、その壁際の席で、金髪の小柄な少年がスモークサーモンと温野菜のサラダを黙々と頬張っている。
別段人目を引く店構えでもないのに、偶然寄ったこの店をフォシーユは気に入り、既に何度か足を運んでいた。磨り硝子のはまった黒鉄の飴色ランプが照らす店内は、どこか懐かしく落ち着いた雰囲気で、客も多くを連れ立ってはおらず、話し声も自然と潜まる。焦げ茶のダイニングテーブルは、2人掛けにしてはやや小ぶりな大きさだったが、1人で使う分には十分な広さだ。それぞれの席には柄の異なるシルエットグラスが置かれていて、たった今空にしたサラダボウルの横では小花模様の明かりが揺れている。
今日の夕食はサラダと、じゃがいものポタージュ、ガーリックチーズを乗せたトースト1枚と蜂蜜を溶かした白湯。成長期の少年の夕飯にしてはボリュームが無いのは財布の寒さからではなく、長年の食習慣に依るところが大きい。
あまり広くはない店内の反対側から、先ほどから声を殺した小さな歓声、悲鳴、ざわめきが聞こえてくる。ここ最近、何件かの酒場では少し人の捌ける時間帯となると、カードゲームに熱中している人々の姿を見ることができた。2人のプレイヤーが互いに山札から札を引いて手札とし、机に並べて見せ合っているようだが、黙ってはゲームが進まないようで、ボソボソと話し声が途切れることは無い。なにもこの店でやらなくても、と最初は思ったが、彼らも店主に追い出されないよう気を使っているようだ。
そんな様子を横目にのんびりと食事を進め、〆に温んだ湯を飲み干す。好みに味付けされた料理で腹が満たされるのは何にも代え難い幸せだ。一時期、街にはびこった紫色の果実よりも、柔らかく火を通した春キャベツやニンジン、ジャガイモの方が何倍も美味だろう。それに燻したサーモンとオリーブを乗せ、おろし玉ねぎのドレッシングを掛けたならばなおさらだ。
穏やかにやってくる眠気のような満足感に目を閉じた時、コンコン、と固いものを叩く音が間近で聞こえた。店員に呼ばれたかと目を開けると、空いた椅子の向こうに誰かが立っている。
「相席、よろしいですか」
この店はアルコールを出さないので、夕食後の時間は空席の方が多い。それなのに相席とは何事かと、若芽色の瞳で声の主の姿をみとめたフォシーユは絶句する。
突然の珍客は全てにおいて、怪しいと言わざるを得なかった。仮面舞踏会から抜け出してきたのではないかと思われる、目元を隠す派手な仮面に暗い色の紳士の装い。脱いだ帽子を胸に当て、長い茶色の髪を片耳の下で束ねて垂らしている。驚いてなんの反応も返せないでいると、仮面紳士は空いている隣の席に帽子を置き、手袋を脱いで勝手に座ってしまった。
紳士は注文伺いにやって来たウエイターにフォシーユの空いた食器を下げるよう頼み、その通りに片付けられると今度はヌガーの盛り合わせとコーヒー、そしておそらくこちらに向けてなのか、クッキーとティーセットを運ばせた。
「あの……」
「こちらはあなたに」
勝手に進む時間の流れに取り残されたような錯覚に陥り、絞り出すように声を発したのは、茶葉を蒸らす時間を測る砂時計が落ち切る寸前。紳士は満足げに頷きながら、小さく切られたナッツぎっしりのヌガーに夢中だ。よく分からないことに巻き込まれた不安は暗雲のように沸き起こっていたが、手を付けないのも失礼かと思い、とりあえず白いティーポットを取り、カップに注ぐ。カモミールのフレーバーティーだろう、薄黄の水色からりんごに似た香りの湯気が鼻先をかすめる。
「なかなか良い店ですね。気に入りました」
無言のまま2杯目を注ぎ終えた頃には、落ち着いて状況を見る余裕が戻ってきた。目の前で優雅にコーヒーカップに口を付けている仮面紳士は、声の感じからおそらく成人ではない。自分と同じか、少し上に思われた。被服を見る限りでは相当な裕福層であると伺える。黒に近い色に染められたジャケットは、揺らめく手元の灯りに品の良い光沢を弾き、おそらく上質な毛織物。シルクシャツの胸元を飾るレースのジャボタイは精緻の極みを尽くしており、袖口からこぼれるレースも同様で、その指先に労働の跡はない。
身分ある若君の気紛れか。それならば、人目もはばからず積極的に騒ぎを起こす可能性は多少、低くなるだろう。関わり合いにならないのが一番良いと分かっている。が、茶を出されてしまった以上、無視して席を立つのは最善とは思えなかった。穏便に相手の目的をまず知り、不必要に刺激しなければ、悪い事態にはなるまい。素早く店内に目を走らせるが、店員含め誰も自分達の行動を気にしているような様子はなかった。
「カードに興味はお有りですか」
良い焼き色の付いたクッキーに手を伸ばした瞬間に、唐突に話題が振られた。思わず手を引っ込めると、紳士は仮面の口元で笑っている。懐からしなやかな光沢の袋を取り出し、口を開け中身を掌に広げて見せてきた。占いに使う札に似ているが、描かれているのは短い単語と、単語の意味を影絵のように表した装画。どの札にも違う絵柄が描かれているようだ。中にはいくつか見知ったアビリティの名がある。
「今、一部で流行していまして、ご存知ですか。あちら様でも盛り上がっているようですね」
向けた顎先で今だ賑わう反対側のテーブルを示される。磨いた銅のような髪が肩を滑り落ちるのを見て、一瞬、苦痛に塗りつぶされた、けれど忘れがたい鮮やかな記憶が蘇る。だが「彼女」がラッドシティにいるはずがない。多くの人は生活する都市国家から離れることはないし、それが高い塀にかこまれた天空の庭に住み、下界を見下ろす尊き身ならば、尚更そうだろう。唇を軽く噛み、奇妙に甘美な寒気を振り払う。
「聞いたことはあるけど……ルール、知らないし、出来ないよ」
流行だという『扉の世界』。興味がないわけではなかったが、内容までは知らない。対戦を望まれて相手になるわけもなく、少年は慌てて制止した。だが紳士は笑うだけで、何も答えない。その間にもカードは揃いの背面を表に混ぜられ、再びひとつの山になる。彼は山の上から数枚をつまみ上げ、さあ、と寄越す。拒否権はないようだ。諦めの混じった溜息をそっと吐き出し、応じる合図にカードを手に取ると、仮面の奥、黒とも闇とも見分けの付かない色の目が細められた。
空いた菓子皿を隣の席に追いやった紳士に倣い、結局手をつけずにいたクッキーの皿も移動させる。手札は『ノーブルコミュ』、『幻獣魔曲』、そして『氷結剣』。どれも馴染みのある、己が扱えるアビリティだ。このカードで、どうやって勝敗を決めるのだろう。そういえば、以前酒場でこのカードゲームを熱っぽく紹介していた女性は、カードを経糸、プレイヤーを緯糸になぞらえていたことを思い出した。
「ルールは簡単。より深く烈しく相手の心に己を焼きつけた方が、勝ち」
紳士は山札から数枚めくり、そのうちの1枚をテーブルに表向きで示す。アビリティのカードとは違う色の飾り枠に縁取られた、扉のカード。
「これが最初の舞台。手札を順に出して、物語を綴っていくのです」
絵柄は鮮やかな若草色と豊かな深緑、白ワインの黄金色が散りばめられた見事な薔薇窓、カード名は『大聖堂』。血が逆流したように下がり、手札を取り落としそうになる。カード名をアビリティではなく、もっと広い意味に捉えると、一連の堪え難い過去の記憶と一致する。因縁のカードで己の物語を語れと、『扉の世界』とは、なにもかも白日の下に暴き立てる占い札なのか?
「さあ、貴方の声を、聞かせて頂戴」
穏やかで滑らかな、しかし残酷な笑いを含んだ声が、既に少年の心を激しく波立ていた。声の主を正視することができなくなって、銅の髪色はもう目に入らない。彼の正体が何なのか、この遊びに悪意が入り込む余地があるのか、もう考える意味などなかった。これが夢でも現実でも、ただの一滴で少年を支配する悪夢の手のうちから逃れる術はなく、ただ震えながら全てが過ぎ去るのを待つしかないからだ。
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