春先のにわか雨
トミーウォーカーが運営するPBW『エンドブレイカー!』での活動記録です。
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2013
04,29
無題
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【銀の塔主の行方:ハイスピード・トラップ】
余話
海上で受ける春の風は思いのほか冷たく、強い。
青い晴天に吹きちぎられた白い雲が流されて、時折陽を隠しては去っていく。背後の森のざわめきと波の音が混じり合って、嵐のような音が響いている。砂地に這う蔓葉のなかにちらほら咲く桃色の花も、哀れなほどに吹き乱されていた。
その灰色の砂浜に、長衣の少年がひとり、佇む。
勇士号で銀の塔主を追う途中のエンドブレイカーたちは、予見されたマスカレイドの奇策に怯むことなく、シーバルバの襲撃から船を守り切った。
迎撃隊に志願したうちのひとり、フォシーユは収めた武器を片手に、戦友達が引き上げたあとも、ただじっと海を眺めていた。
入り乱れた足跡と爆風の跡、転々と落ちた血痕が生々しく残る砂浜は、生臭い匂いが強く鼻につく。それを振り払いたくて、少年は空いた片手で湿った頭に指を通した。少々煩わしく伸びた髪は潮を浴びて不愉快にべたついている。アクスヘイムに帰る前に勇士号で湯を借りようと、首を振って髪を風に預けてから、こめかみに感じた痛みに顔をしかめた。
短時間とはいえ、マスカレイドシーチッタニアン3体を相手に立ち回ったのだ。棘の力で得た瞬発力から閃く切り裂きの技は情報通り相当な切れ味で、狙いも正確。薄く細い剣身を用いて弾き逸らすには、少年の技量は未熟すぎた。ましてや、金銀細工の護拳を盾に使うなどとはとても考え付かない。避けられない攻撃は、すべて己の身で受けた。
髪と同じく湿って重くなった白い服は爪のようななにかで裂かれ、ところどころに赤い染みがにじんでいる。慣れない砂地でよく保ったものだ。傷は癒しの術で塞いでもらったが、失血までは取り戻せない。頭痛がするのはこのせいだろう、と他人事のように思う。
動けなくなるほどの怪我ではないのだから問題ない。それよりも、破損した衣服の修繕をしなければ。武器もだいぶ無理をさせている。派手な外見だから出来るだけ目立たないようにしてきたが、いちど武具屋にでも持ち込んで見てもらうのがいいかもしれない。
未だ静まりきらない心臓の鼓動をなだめようと、ゆっくりと息を吸い、細く長く吐き出す。戦闘の残り香強く漂う海岸には、靴を履いたシーチッタニアンたちの遺体はない。海の中へ吹き飛ばされたか、デモニスタの技で跡形なく消滅させられたか。
(あのシーチッタニアンたちも……)
復讐心をあらわに襲い来るかれらの戦意は非常に高かった。過去、先祖がマスカレイド側について戦い「勇者」に敗れたあとは、大魔女によって薄暗い海底で苦役を強いられるようになったという。代を重ねながら、親から子へ、子守唄のように引き継がれる怨嗟と諦観の重さは、想像を絶する。
焚き付けられたシーチッタニアンたちは望んで棘を受け入れはしたが、上陸後に自爆するとは気付いていないようだった。かれらを煽ったマスカレイドは、勇士号にダメージを与えられれば上等、あとは多少の時間稼ぎが目的、といったところだったのかもしれない。利用できるところだけ利用したらあとは捨てる。欲望のままに振る舞うマスカレイドとは、どこまで卑劣になれるのだろう。
きらきらと輝く水平線は、頭上よりだいぶ傾いた陽を浴びて、ほんの少し金色を帯び始めている。この紺碧の海の下で、今もシーバルバたちは働かされているのだろうか。勇者に挑んだ烈士たちが敗北したとなれば、それを理由により一層痛めつけられているのかもしれない。
菩提樹緑の目を伏せる。否、シーバルバたちにいかな悲願があったとしても、勇士号を破壊させるわけにはいかなかった。最初から話し合える相手ではなかったのだ。相容れない問題を解決できぬと分かっていてなお情を寄せるのは、ただ悲しいだけ。しかし……死してしまえば、人とバルバも、棘も仮面も、もはや関係ない。
懐から金の十字を取り出し、薄い胸に押し当てる。情報屋から聞いたシーバルバの身の上は、少年の忘れ難い記憶を揺り起こした。なにもかも奪われていたあの頃に、もう戻りたいとは思わない——だから、遺体を海へ帰してやろうと考えたのは間違いだった。
海はかれらの故郷であったが、同時に生まれる前からの牢獄でもあった。覆せぬ力関係が育む、絶望の檻。絶えない苦痛から解放されるには、敵地である陸に向かうしかなかったのだ。海の底ではない場所、見上げる光の向こうに、どこかにあるはずの安息を求め焦がれて。
望みに答えて力を与えたマスカレイド、棘を刈り取ったエンドブレイカー。
誰がかれらを救えただろう。
血の気の引いた頬に風がひときわ強く吹き付ける。吐き気がして、たまらず、フォシーユはその場に膝を折った。この耳で、身体で、かれらの声を聞いた。怒りと憎しみ、深く暗く淀んだ恨みの声。それと、傷つきもがき苦しむ、望みなき者の声。そんなかれらに挑発と称して己の浴びせた言葉の、なんと悲しく罪深いことか。
癒されたいと望む者から、命を奪うことが唯一の安息などと認めたくない。だがエンドブレイカーの使命に突き動かされるたび、現実が心を切り刻む。ならばせめて、かれらの重荷が解かれ、安らかな眠りが齎されんことを。願わくば、光注ぐ優しい場所へ迎え入れられますようにと……殺めた者の、主なき祈祷など、どこにも届かないかもしれないが。
陽が陰り、にわかにあたりが暗くなる。湿った砂を掴んだ手の内で、連なる黄緑の珠がしゃらりと鳴った。
(ごめんよ)
波の音が遠い。
ただひとつの命を賭して戦った相手に、してやれることはなにもなかった。
しかしそれを超えてなお願うことを、人は祈りと呼ぶ。
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