春先のにわか雨
トミーウォーカーが運営するPBW『エンドブレイカー!』での活動記録です。
最新記事
はじめに
(01/02)
バトルピンナップ/モク様
(12/21)
IC/真彩子様
(12/21)
3人ピンナップ/MAO..AZ.様
(11/16)
南瓜行列2014/秋鮭子様
(11/10)
カテゴリー
設定 ( 15 )
冒険 ( 88 )
イラスト ( 57 )
雑記 ( 25 )
アーカイブ
2020 年 01 月 ( 1 )
2014 年 12 月 ( 2 )
2014 年 11 月 ( 2 )
2014 年 10 月 ( 2 )
2014 年 09 月 ( 2 )
リンク
フォシーユ(c23031)
エティエンヌ(c25992)
ブログ内検索
2026
04,05
[PR]
CATEGORY[]
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
2012
11,30
懲りずにもし旅団シナリオを企画するとしたら
CATEGORY[設定]
スペシャル・シリーズシナリオ、どれだけ本数が公開されるか分かりませんが、運に恵まれたら参加したいです。
※いろいろ酷いのでご注意ください※
アクエリオのとある市街地、大運河から分かれた細い水路がいきつく先に、古い街並みが残る区画があった。かつては郊外型の華やかな商業区であったものの、運河の再開発にともなって利便性が悪くなり、新規都市計画のあおりで廃れてしまったという。星霊建築に過剰に頼らない、赤レンガ積みで統一された建物、割り石タイルの道、すらりとした黒鉄の星霊灯は非常に洗練された趣で、商店街に寄り添うイチョウ並木とともに景観資料として保存されてはいるものの、不便さも祟って観光客は少なく、かつての活気は影もない。
寂れた桟橋から上がった者を出迎えてくれる並木の向こうに、ひときわ目につくホールがある。他の建物と揃いのレンガ壁には蔦が這い、エントランスホールのドームを戴く屋根はスレート材。硝子窓を囲む石枠には美しい模様の大理石が選ばれ、ひとつひとつ大胆に意匠化された水流の彫刻が施されている。小規模ながら豪壮華麗なその姿は、特に今の時期、夕の光に照らされると黄色く色付いた並木とのコントラストが強調され、色鮮やかでありながらもの悲しく、誰しもが足を止めるような景色だった。
フォシーユはこのホールで月に2度ほど練習が行われる合唱団に参加していた。なぜこの会を選んだのかというと、『素敵なホールで練習している混成合唱団(※女性が多いため男性大歓迎!)』という広告に哀れにも引っかかったからだ。添えられた地図は大型乗合ゴンドラの運行路からもかなり外れた場所で、散歩がてら自前のゴンドラで行ってみることにした。狭くなる川幅とともに見えてきた並木道と洒落たレンガ街に、さぞかし高尚な合唱団なのかと勝手に想像したりもした。
ところがいざ蓋を開けてみると、メンバーは暇を持て余している熟女の方々で、人数は両手ほど。発表会などはなく、練習といっても大半は休憩時間、男声陣は幽霊団員という有様。しかし全員が、趣味にしては素人離れした、熟練の歌唱力を誇っていた。メンバーの大半はかつて歌姫を志したものの、スターにはなれず挫折した経歴の持ち主たちだったのだ。
それぞれが目立ちたがりなものだから、声を合わせる気などさらさらなく、合唱団と言えるのかすら怪しい。盛り上がると自慢大会やリサイタルになることも多々あった。曲がりなりとも典礼の一部である聖歌隊しか経験したことのなかったフォシーユはその破天荒さに最初は辟易したが、彼女らがしばし日常から解放され、昔諦めた夢に想いを馳せる場所と気付いたとき、不思議と居心地がいいと感じるようになったのだ。
いつも通りの練習が昼過ぎから始まり、長いティータイムを挟んで夕方前に解散した後、少年は自分のゴンドラに乗り込んだまま、櫂を手に暮れていくドロースピカを反射する水路をぼんやり眺めていた。ここからだとホールのドーム屋根だけが並木の向こうに見える。光を照り返した瓦は明るい金色に輝き、目の端を射った。時々、わずかな風がイチョウの葉を揺らし、はらりと石畳や水面に落としていく。係留しているうちに、ゴンドラの中にも何枚か葉が溜まっていた。これが金貨だったら……少し前に行った製菓市で、奮発して調理ナイフセットを買ってしまって以来、しばらく依頼も受けていないので懐が寂しい。また1枚、風にのって葉がゴンドラに舞落ちる。美しい景色を前にした下世話な連想に、少年は我に返って己を恥じた。
船底の荷物は長年愛用してすり切れた濃緑の楽譜はさみと、なけなしの有り金を入れた小さなショルダーバッグ、それと空になった籐のバスケットのみ。エンドブレイカーの活動に伴って一度離れたアクエリオにも、世界の瞳によって気軽に帰ることができるのはとてもありがたい。ラッドシティで遺跡を管理してくれているはずの老人と猫は元気だろうか。
一度は脱退した合唱団に復帰した少年を、メンバーたちは手放しで歓迎してくれた。曰く「ここに来る前に菓子屋に弟子入りしてきなさいよ」滅茶苦茶な話だ。けれども練習のスケジュールに合わせて菓子を作っていたのも確かで、毎回いびつな出来を笑われながらも、茶請けとしてきれいに食べてもらえるとやりがいを感じ、居場所ができたようで嬉しかった。
誰もが、苦さと痛みを抱いて生きている。過ぎた時間を笑い話にできる彼女たちを見ていると、なにかにつけて沈みがちな心が少し軽くなる気がした。
風が冷たい。前回来た際に着込みすぎて暑かったので、今日はやや軽装で来てしまった。温暖なアクエリオとはいえ、この時期暗くなってからゴンドラを操作するには薄着すぎるかもしれない。戻ろう、と櫂に力をこめようとしたとき、桟橋からじっとこちらを眺めている人がいることに気付いた。
自分より少し小さいくらいの女の子だろうか。赤を主体にした格子柄のコートは見るからに上質で、コートの裾から覗く白いレースも、艶のある茶色のブーツもいいところの息女らしい身なり。並木道の下を通ってきたのか、肩にイチョウの葉がいくつか乗っていた。もこもこの毛皮帽子からは濃い色の髪が長く垂れ、しっかりと巻かれたマフラーから覗く頬は風に吹かれてか赤く染まっている。
しかし、どこかちぐはぐな印象を受けた。違和感を確かめようと目を凝らしたとき、少女と視線がぶつかる。とたんに瞳の奥から見えざる光景が眼前にあふれ出した。
気が付いたとき、あたりはすでに薄暗く、ゴンドラは不安定に揺れながら岸を離れていた。痺れたように思考が鈍い。眩暈と吐き気すら覚える。すぐ近くで聞こえた水音に慌て、船から投げ出されないように脚に力をこめてなんとか舵をとる。水路中央の流れをとらえ、葡萄葉のかたちをした鉄の舳先飾りが進行方向を向いた。ぎこちない喉を開けてもひゅうと情けない音しか出ない。大丈夫、既になんども通った水路だ。どんなに影が濃くなっても大運河までの道順は覚えている。
どうしてこんなことになったのだろう。櫂を握る手が冷たいもので固定されているようで、乾いた唇から強引に出した酷い声では思うように加速しない。しかし、進まなければ。行き先の選択が正しいかは分からない。ただとにかく一刻も早くこの場を離れたかった。
「ということで……皆さん、お知恵をお貸し、ください……」
言葉の最後にはテーブルに突っ伏し、そのままずるずると床に座りこんだフォシーユを、ある者は心配そうに、ある者はにやけた笑いで、ある者は冷ややかな視線で見つめている。
夕飯時で混み合う店内はほぼ満席で、明るい店内では折しも陽気な弾き語りの演奏が始まり、彼の醜態に興味を示しているのはテーブルのひとつに集ったエンドブレイカーたちのみ。おのおの注文した料理を思い思いに楽しんでいるが、少年だけは注文する余裕もないほど追い詰められている様子だった。
「……駆け落ちの手伝いをして欲しいと?」
ペンネのクリーム煮を行儀悪く頬張ったまま、ひとりが背中越しにカウンターをフォークの先で指す。そこには先ほどの赤い服の少女が両手で湯気の立つマグを包み込み、フォシーユの支払いでホットミルクを堪能している。マフラーと帽子を外した少女は控えめに評価しても、年相応にあどけなく、可愛らしい顔立ちをしていた。焦げ茶色の長い髪はまだ乱れたままだが、あの様子では落ち着いてきているようだ。
がば、と顔をあげて少年はテーブルに身を乗り出した。
「違う、断固として違う……お願い、信じて」
「そう言われても」
卓の仲間たちがひそひそと目配せしあう。
「美少女が『どこかへ連れていって』なんて突然ゴンドラに飛び乗ってきて抱きつかれただなんて、今時誰が信じるか」
「違う、じゃない違わない、違うんだってば」
見えてしまったエンディングに放心している間に、少女は彼のゴンドラに飛び乗って来たのだ。激しく揺れて手放しかけた櫂を強引に押さえつけられ、早く出してとかさかさの声で囁かれれば、その異様さに気圧されてしまう、小心者の悲しい性だった。あとは状況をまったく理解できぬまま、薄暮の水路を全力で操ってここ、馴染みの旅人の酒場まで来てしまった。先ほどの説明のような、青春物語じみたことは全くない。動揺した話し手の喋りが悪すぎて、誤解を与えてしまったのもむべなるかな、ということにしておく。
言い訳を早々に諦めて、フォシーユは咳払いをひとつして椅子に座り直した。
エンドブレイカーを認知し好意的に受け入れているアクエリオとはいえ、エンディングの内容を不特定多数のいる空間で口に乗せるのははばかられる。今はギターの音色や騒々しさが声を上手く隠してくれた。
「あの子は、逃げてきたみたいなんだ。……家出のようなもの、なのかな」
家出というフレーズになおも茶化そうとする者を珍しく強気に無視し、彼は続けた。
「ほとんど偶然だったけど、僕の見た『今日の宵、悪漢に手荒に連れ戻される』エンディングは回避できた。でも……」
少年は口籠もる。しばらく黄緑色の目がテーブルの上の皿を泳ぎ、小さくため息をついた。
あのとき感じた違和感とは、少女が身なりの良さに反して肌はくすみ、髪がたいした手入れもされずに傷んでいたことだった。地方領主の屋敷で2年ばかり使用人をしていた彼は、上流階級の生活と立ち振る舞いを直接目にしている。カウンター席でがつがつと温かい野菜スープをかき込んでいる姿からはとても育ちが良いとは思えず、かといって着飾って客をとる商売をしているとも思えない。
そして、隠しきれない無気力な雰囲気。覗き込んだ瞳の暗く濁ったさま。深く沈み、なにもかも奪われて、光すら求めず闇をさまよう者の色。それは少年になによりも信憑性のある直感を与え、同時に嫌な記憶をも思い出させた。
「『商品』と、悪漢たちが言っているのが、聞こえた」
背筋を上る寒気を気取られぬよう、唇を噛む。実は、エンディングからはもっと多くの事象を読み取れたのだが、みなまでは言わない。残酷な話は簡単に同情と好奇心を引くことはできるだろうが、彼女の名誉のためにも口をつぐむことにした。有り余る豊かさからも、歪んだ欲望は生まれる。善良な市民は一生のうちに触れることがない、決して表には出ない商売が、あたりが暗くなってからあの瀟洒な商店街の地下で密やかに行われているのだ。
「今も、悪漢はあの子を探していると思う。だからといって、どうしていいのかも、わからない」
おずおずと伏せた目を上げると、皆いつのまにか神妙な面持ちになっていた。不幸なエンディングを叩き潰すのがエンドブレイカーの本懐なれど、砕いたその先をどうかしたいと願うのは使命ではない。それは人の想いから生まれた衝動だ。
具体的な案も思いつかずに起こした行動とは分かっている。己の手ひとつでなにが出来るというのか。動機は、とうてい摘みきれない悪を嘆き、情にほだされた哀れみなのかもしれないし、あるいは過去の境遇と重ねて、自由を手にした今の自分を安心させたいだけなのかもしれない。他人事だと、目を逸らすことは簡単にできるだろう。都市の暗部に関わろうとするのは、常識的には避けるべきだ。けれど、卓の仲間たちの目には使命を超え、あえて困難に挑もうという力が宿っていた。
櫂を押さえられた時に触れられた、少女の冷たい手が思い出される。声なき声が聞こえた気がしたのだ。いちど湧いたこの感情を簡単にもみ消したくはない。
意を決し、強く、一言腹の底から絞り出す。
「あの子を、助けたい」
・少年漫画のノリの、時限ありフラグ式アドベンチャー?(ex.イチョウの葉を片付けないとフォシーユのゴンドラを突き止められてしまう可能性がある、とか
・アクエリオでなければ女の子がマスカレイドというストライク鬱展開
PR
<<
ノベライズ読みました
|
HOME
|
BU/モク様
>>
<<
ノベライズ読みました
|
HOME
|
BU/モク様
>>
忍者ブログ
[PR]