春先のにわか雨
トミーウォーカーが運営するPBW『エンドブレイカー!』での活動記録です。
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2013
01,04
無題
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【傷の約束】
の見苦しいセルフフォロー。
月も風も雲もなく、星だけが見下ろす夜空の下、商店の軒先にはぼんやりと光る常夜灯が頼りなげに揺らめく。夜半の静寂に沈みきった路地で、その立ち回りは密やかに行われていた。
エンドブレイカーたちが請け負ったのは、夜の街に出没しては凶刃を振るうマスカレイドの討伐。見得た情報をもとに、待ち伏せ、挟み撃ちへ持ち込む作戦は功を成し、戦端から終始エンドブレイカーたちのペースにあった。達人と呼べるほどの剣術の冴えを見せたマスカレイドも、部下の野犬をことごとく撃破され、包囲陣形をとられてしまえば多勢に無勢であった。
獣の腕に捕らえられて奇妙な角度に曲がった男の首から、白い仮面が剥がれて落ちる。不気味な笑顔の面はごく軽い音をたてて、呆気なくふたつに割れた。マスカレイドはなにかを訴えようとしながらもがいたが、呻き声は泡となって口からこぼれる。最期のあがきはしだいに足先を引きつらせるだけになり、やがて動かなくなった。
棘の気配が霧散したことを感じ取って、フォシーユは構えたアイスレイピアの切っ先を下ろす。どさりと倒れ伏した男を中心にして、誰もが弾んだ呼吸をしていた。鼓動が身体を熱く巡り、吐き出された息は湯気のように立ちのぼる。見たところ、衣服の破損は多少あれど、大きく傷ついた者もいない。理不尽な結末を破壊した勝利に、誰の頬にも満足げな笑みが浮かんでいた。
しんとした夜気が血の臭い漂う戦場を包み込み、ゆっくりと冷ましてくれる。得物を収めはじめた戦友たちにつられ、少年も安堵のため息を吐き、剣先を左手に握った鞘口に導いた。優美な細剣は柔らかな色彩に反して、巨大な氷柱を瞬時に生み出す魔力を秘めている。その余波は容赦なく使い手の身体を苛んだ。歌唱をもうひとつの武器とする魔曲使いに、乾いた冷気は喉を萎縮させる毒となる。
金銀細工で繊細な植物文様を描き出し、貴石を嵌め込んで芽吹きの季節を象った儀礼剣。このような品がなぜ姓もない孤児の手にあるのか、傍目には奇妙に見えた。振るえば身を痛めつけると知りながら、少年は身体の一部でもあるかのようにこの剣を手放さない。
白銀の刃は使い手に興味はないとでも言いたげに、うつくしい姿に似合った微かな音をたてて、凶暴な本性を白革の鞘に隠した。
昂ぶった気がしだいに鎮まってくると、遠ざかっていた寒気が戻ってくる。マギラント都市部の冷え込みは厳しいとまではいかなくとも、靴底を這い上ってきて背筋を震わせた。戦闘で散らせた水晶のような氷柱の破片が、道の端でわずかな光を弾いている。この寒さでは、朝まで残るかもしれない。なんとなく気になって、目立たないよう物陰へ隠しておいた。
仲間たちは助けた女性の怪我を調べている。止血に使えればとハンカチを用意してきたが、慣れた者が手際良く処置していく様を見て、口を出すのをやめた。
フードを目深に被った女性は、こちらの行動を好意的に受け取っているように見えたが、犯罪行為を目撃されたことには変わりない。『勇者様』であっても、秩序の中では紛れもなく犯罪者だ。焦りを感じながら、路面に黒い染みを広げている骸に目をやる。呼び出された野犬はマスカレイドが倒れたときに消えてしまったが、一行のなかには死体を都合よく葬る技能を持った者はいなかった。女性にひとこと釘を刺し、早くこの場を去るに越したことはない。
手当は終わり、女性は手を借りて立ち上がる。多少おぼつかなくはあるが、とりあえずの歩行に支障はないようだ。
「……今夜は、何も起こっていません」
わずかな交流に緩みかけた場に、少年はつとめて抑えた声で投げかけた。
女性が口元だけの笑みを止め、訝しげに首を傾げる。そんな反応が返ってくるとは思わず、フォシーユは思わず硬直してしまった。明るみになっては困るのだという意図を含めたつもりが、満足に伝わらなかったようだ。こちらはすべて見通したうえでの行動であっても、彼女には唐突すぎた。どう話せばいいだろうか。足すべき説明がとっさに出ず、口を半開きにしたまま黙りこんでいると、手を出したのはこちらの都合であり、互いのためにも黙っていて貰えないだろうかと、仲間のひとりが助け舟を出してくれる。それでようやく得心した女性は首肯し、事件を黙殺すると約束してくれた。
しゃべるのは苦手だ。歌と同じく声を出す動作なのに、言葉を自分で考えるとなると怖くなって、うまく出てこない。目を伏せ、軽く頭を下げることで誤魔化す。他の人ならもっと自然にやれるだろう。余計なことはするべきではなかった。
少年は情報屋から聞かされた女性の傷痕について、他人が容易に踏み込んでいいものではないと考えていた。誰にでも明かしたくない出来事はある。聞かないのも気遣いであろう。しかし彼女は仲間たちの問いかけに答えた。傷は恩人と交わした約束だという。
フードを脱いで晒された、痛々しい痕を指先でなぞるさまを、フォシーユは一歩離れたところから見つめていた。目立たぬよう身を隠し、点々と住まいを変える生活を決して望んだわけではないだろうに。不本意な評判をたてられて、まさに今、理不尽な扱いを受けたばかりで、どうしてなんともないというような顔ができるのだろう。まぶたの裏に焼付いた光景はどうやって消すの? あふれた悲しみはどこへ流す? 眠ろうとすると不安と恐怖が襲ってきませんか? 夢の中でまで助けてと叫ばないとならないときはどうすれば?
少年もまた、この場の何人かと同じく、癒されざる傷に囚われ続けているひとりだ。それを暗闇と例える彼には、彼女の生への執着は燃え上がる炎のように純粋で、限りなく崇高で美しい、不可侵なものに思えた。心の隙を狙う棘すら寄せ付けない、眩い光。
痛みを忘れることはできなくても、しかるべき場所に収めることはできる。最初から強くあったわけではないだろう。残された約束は感情の奔流の中から昇華され、身のうちに強く灯った。その想いは余人には計り知れない。
彼女の声はどこまでも穏やかだった。もう少し、このまま話を聞きたいとさえ思う。しかし長居をする余裕はないと、誰もがきちんと理解していた。
「……約束、果たされますように」
場を去ろうとするスティニアに、フォシーユは伏せていた目を上げ、思い切って声を掛けた。頑張れ、応援してるよ、なんて目の前の相手に対しては足りない気がして、少ない語彙のなかから捻り出したのは、彼女自身を肯定する祈り。同情でも慰めでも憧れでもなく、その灯が消えることのないように。傷持てる女が振り返り、小さく手を上げる。今度こそは、ちゃんと意味が伝わっただろうか。
左腕で抱えた剣の重さを確かめる。この剣の贈り主と初めて会ったときに賜ったひと言。それを忘れたくなくて、氷剣を振るう。いつか自分も、暗闇を払うだけの強さを得られるだろうか。
残されたエンドブレイカーたちはそれぞれの感慨を抱いて、その背が見えなくなるまで見送った。ふと空を見上げれば、満天の星々が澄んだ夜空いっぱいに瞬いている。いつまでも、彼女の行く手が照らされるようにと、願わずにはいられなかった。
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